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医療安全、まずこれだけは

このページでは、市民や患者の皆さんに知っていただきたい医療安全の基礎知識について解説しています。

1. 医療安全の取り組みのきっかけ

日本で医療安全の重要性が認識され、全国的な取り組みが始まったのは、1999年に発生した2つの医療事故がきっかけでした。
一つは、1月に発生した手術患者取り違え事故です。横浜市の病院で、それぞれ心臓と肺を手術する予定であった患者Aさん(74歳・男性)とBさん(84歳・男性)を取り違えて手術を実施し、手術終了後にICU(集中治療室)で2人の取り違えに気付いたという事故でした。
翌月には、別の病院で、患者さんの点滴に、ヘパリン生食と間違えて同じ形の注射器に入った消毒薬を注入し、患者さんが亡くなるという事故が発生しました。2つの事故は大きく報道され、医療事故が社会問題と認識されることになりました。
これらの事故をきっかけに医療界では、医療事故を「あってはならないこと」としてタブー視するのではなく、「起こりうるもの」という認識をもって、本格的な医療安全の取り組みを行うようになりました。

手術患者の取り違え事故を教訓に、患者確認のために入院患者の手にリストバンド(ネームバンド)をつけることが普及しました

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2. 医療事故とは

「医療事故」と聞くと、市民のみなさんは、「医療者がミスをしたのだろう」と考えられるかもしれません。けれども、「医療事故」は、医療者に間違い(過失)があったかどうかに関わらず、医療に関わる場所で発生するすべての人身事故をさしています。
また、医療行為に関することだけでなく、患者さんが廊下で転倒して負傷した場合のように医療とは直接関係のない事例や、使用後の針を医療者が誤って自分に指してしまった場合のように医療者に被害が生じた場合も含んでいます。
医療現場では、このような過失の有無にかかわらず、さまざまな「医療事故」の発生を少しでも減らし、「医療事故」が発生した場合にも適切に対応して被害を最小にできるように、医療事故防止の活動に取り組んでいます。
また、結果として患者さんや医療者への被害が発生しなかった(あるいは軽微であった)事例は、「インシデント」または「ヒヤリ・ハット」と呼ばれています。医療現場では、これらの事例も現場の医療者から報告してもらい、分析して再発防止策を立てる取り組みを行なっています。

「医療事故」や「インシデント」を全国規模で集め、事故防止に役立てる取り組みも行なわれています。

 

3. 医療機関が法律で求められていること

厚生労働省は、2000年以降、全国の病院に対し、医療安全管理のために組織的な取り組みを進めるよう求めてきました。現在、すべての病院に、①安全管理のための指針を作ること、②安全管理のための委員会を開催すること、③安全管理のための職員研修を開催すること、④院内で報告制度を活用して安全のための改善を行なうことなどを求めています。
また、安全管理体制を整備している医療機関には、診療報酬を加算する(医療機関の収入が増える)仕組みが作られています。
また、患者さんや家族、地域住民からの医療に対する心配や相談・苦情を受け付ける行政の相談窓として都道府県等に「医療安全支援センター」設置されています。
2015年10月には、新しく法律が作られ、事故の再発防止を目的とした医療事故調査制度が始まっています。

医療機関での安全管理のための委員会は、月に1回程度開催することが求められています

 

4. 人は誰でも間違える

アメリカの公的機関である医学研究所が設立した「米国医療の質委員会」は、1999年11月に、同国でも社会問題化していた医療事故への対応を当時のクリントン大統領に求められたことから、報告書「To error is human」(邦題 
『人は誰でも間違える-より安全な医療システムを目指して』)をまとめました。日本では2000年11月に翻訳されて出版されました。
そして、医療事故を減らすためには、「エラーは絶えず起こりうること」と認識して、医療安全のシステムづくりを進めていくことが必要であるという考え方を示し、具体的な取り組みについて提言しています。
その後の日本における医療安全に関する政策や研究の基礎となり、各医療機関における安全管理の考え方の基本にもつながっています。

この報告書では、米国では、毎年4万4000人から9万8000人の入院患者が医療過誤(医療者に過失によって起きた医療事故)で死亡していると述べられています。

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5. 医療安全への患者参加の重要性

医療安全は医療者にとって最優先に取り組むべき課題ですが、患者も医療安全に関心をもち、それに参加することで事故防止の効果を高めることができます。
患者自身が事故を防ぐために自らできることがあります。たとえば、自分が飲んでいる薬をきちんと把握し正しく服用することや、入院中には転倒しないよう滑りにくい履物をはくこと、医療者からの注意を守ることなどです。
また、治療や検査の中で、変だな、いつもと違うなと思うことがあったら遠慮しないで医療者に伝えることや、医療者から渡された書類、薬剤に書かれた氏名が自分のものかを自分の目で確認することも重要です。患者が、患者の視点で自分に行われる医療をチェックすることで、医療者だけではなかなか気づくことのできない間違いを見つけ出し、事故を未然に防ぐことができるのです。
最近は、多くの病院で、患者間違いを防ぐために、患者さん自身にフルネームを言っていただくよう、患者さんへの協力を求めています。皆さんも、医療安全のパートナーになりましょう!!
具体的な方法については、「フルネームを名乗る理由」「スリッパはダメ」「医療者とのコミュニケーション」のページをご覧ください。

お薬手帳で、自分が服用している薬を把握しましょう。また、受診の際、入院の際はお薬手帳を持参して、医療者に見せることで、薬の間違いや重複などによる事故を防ぐことができます。